とどまる所を知らない中国の環境規制
アップデート:2017/06/28 お知らせ 閲覧数:8712
とどまる所を知らない中国の環境規制
・電融マグネシアが入って来ない!
・フッ素製品が入って来ない!
・セバシン酸が入って来ない!
・セラミック製品が入って来ない!
・ウレタン原料が入って来ない!
・タンカルが入って来ない!
・・・
昨年末ごろから中国品を扱っている会社担当者は悲鳴を上げた事に違いない。
背景には、中国環境保護部門の環境規制の強化、環境汚染の取り締まりによる広範囲、
大量な工場操業停止と、工場閉鎖が多発しています。
中国に、曰く「史上類を見ない」環境保護の取り締まりは過去に何回にもありました。
ただし今までの規制は大体限定された地域、業界及び時間帯に収まり、
環境部門に課せられた罰金さえをきちんと払えば、小さい傷で軽く済んできたのは
ほとんどだそうです。そのような経験もあったので、今回のキャンペーンにつていも
楽観視して来た関連企業は多かったようです。
ところで3ヶ月経っても、4カ月、半年経っても一向に取り締まりが静まる気配が無く、
それ所か、中央政府から各地方に送られた「督査組」(視察チーム)は波打ちのように、
6月9日時点は既に5回目(輪次・順繰り)に入りました。
5回目のの視察の結果は既に中国環境部のオフィシャルサイトにアップデートされました。
6月9日から22日までに28もの視察チームは計6,298社をチェックし、
3,857社の会社に環境問題を発見でき、摘発されました。実に6割以上に占めています。
中身ついては具体的に、
1)「散・乱・汚」企業(国の産業政策に合ってなければ、製造プロセスも時代に遅れ、
且つ水/ガスなど排出設備は基準に満たしてない、若しくは資格、企業資質など手続きが
足りってない企業の総称)は1,220社
2)基準以上に排出した企業2社
3)排気、廃水設備が揃ってない企業285社
4)排気、廃水設備を正常に稼働させてない企業261社
5)揮発性有機化合物(VOCs)を有効的に管理できてない企業642社
紙一枚の通告ですが、舞台裏には製造ラインの停止、工場閉鎖、刑事告発などの
激動が見え隠れました。
地方の一例を取り上げますが、
2016年11月24日からスタートした中央2回目広東省視察チームは、仏山市だけで793社を閉鎖し、
刑事案件として立案11件、拘留5人、逮捕3人に昇る事態になりました(時代週報による)。
工場閉鎖による影響は、陶器、印刷、製紙、塗装、メッキなどの業界に波及し、
中国家電大手「天下の美的」社も川上の製造停止により自社製造ラインが止まるほど
深刻事態に陥りました。
あくまで氷山の一角ですが、企業界を震撼した深海爆弾であることを言っても過言ではありません。
先の見えない製造ラインの停止、工場閉鎖による玉不足が多発し、今後の値上がりを見据えた買い溜め、
売り惜しみ行為を繰り返された結果、一層に原料のタイト感を押し上げられ、一時各原料価格はウナギ登り
の勢いで、右肩上がりの一直線でした。
下図は弊社取り扱っている某無機系中間製品の価格推移であり(縦軸は値上げ幅)、
ユーザー様の評価結果が良好により、毎月見積もりを取り続けてきましたが、
中国メーカーに問い合わせる度に価格が上がり、
(ユーザー様に)海外品に切り替えて頂いてコストダウンを図るところか、
完全に価格は日本と逆転になり、連絡する度に気持ちは重くなっていました。
取引先様の中国原料が思うようにスムーズに入って来なくなった為調査のご依頼を受け、
他の仕事と抱き合わせて6月頭に丸一週間中国の現地調査(聞き取り)を行いました。
関西空港から上海までの国際便の飛行時間より長く、中国国内線で時間をかけて
移動した中国の西北部に到着しました。メディアの報道による先入観もあり、
PM2.5がひどくて霧景色が待っているだろうと思いきや、出張先の初めての昼間は
すっきりした良い天気でした。訪問先の会社の業界性質的で、会社はさらに内陸部に
ありますが、立派な新幹線(高鉄)が走っており、快適な移動時間でした。
訪問先の社長に冗談を交えて天気の話を切り出すと、最近の天気はずいぶん
改善されたことが分かり、各地は「1年中の青空率」を数字化され、達成してない地方のトップは
責任を問われ出世に影響しかねる為、みんな必死だと伺いました。
出発点/目的はともかくとして、結果は民意に適っており、庶民はウエルカムであることは
言うまでもありません。
ただし弊社協力会社のように
・原材料のボーキサイトなど鉱物は前を持ってお金を振り込んでも原料は入ってくる保証は無いのは常態化
・大金をかけて集じん設備などを国の指導のもとで増設したものの、正常生産できる保証はない
・製造停止期間中の雇用の確保と給料の支給は大きな負担になっている
と戸惑いを隠せない企業のオーナーさんは大勢いるのも揺るがれない現実です。
しかし数社の社長さんと会談し、つくづく感じたのは、子孫の健康と幸せを犠牲にして
経済発展をしてはいけない、陣痛は伴うが環境規制は必須との認識は中国企業界に浸透されつつ、
化学産業界を筆頭に「環境保護」をキーワードにした再編成はそう遠くないうちに
進められるだろうと推測され、
早かれ遅かれ日本の需要家も先手を打って仕入先の見直し及びBCP観点のセカンドソース、
サードソースの確保を迫られるではないでしょうか。
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